順送プレス金型から出発
当社はプレス金型メーカーとして出発しました。金型技術は日本人の勤勉さと手先の器用さに、非常にピッタリな技術として、その「職人芸」は神業として誇りとされてきました。先にも触れましたが、戦後、焼け跡から立ち上がった日本の産業が、奇跡とも思われる様な復興を遂げ、世界の市場を次々と掌中にしてきました。この成長を支え続けた来たのが「金型」でした。
その金型技術の中で、プロッグレッシブ(順送金型)金型からスタートした当社は、この順送金型の中にある「絞り」、「曲げ」と言う機能に注目し、お客様からどのような複雑な部品加工を求められても、対応できる技術を磨いてきました。「絞り」については、さらなる深絞りや側面穴あけができる高度で複雑な加工技術が必要になってきます。当然メンテナンスも面倒になるなど、要求される技術は次から次へと出てまいります。
トランスファー金型の開発
そこで順送金型の技術を生かせる「トランスファー金型」の開発にも挑戦してきました。このトランスファー金型は、深絞りや曲げと言う機能をもった単体金型の複合化ですから、メンテナンスも容易になり、材料歩留りもよいというメリットも出てきます。
「曲げ」についても、ステンレスやリン青銅等、ばね性の高い材質が出てくると、材料の特性として「スプリングバック」があり、金型技術はその特性を見込んだ設計が求められます。そうすると、次にその特性を上手く加工制御できる「マルチフォーミング」に着目しました。これは言ってみれば、順送金型の各ステージを、ばらばらにして機械に取り付けるということになります。このように、お客様の求める部品加工にどんな金型が必要かをいつも模索しています。
ファインブランキング金型への挑戦
さらに当社のメイン加工技術となる「ファインブランキング(精密打抜き加工)」にたどり着きます。この技術は厚板の断面を仕上げる「シェービング加工」の機能を含んだ優れた工法ですが、加工理論と金型加工技術が非常に難しいことと、その加工を行うファインブランキングプレス機の価格が高く、中小企業はなかなか手が出ませんでした。事実、70年代に一度挑戦をしましましたが、設備費や仕様の性能を満足させることが出来ず挫折すると言う経験がありました。
しかし、その後、すこしずつこのファインブランキングの金型技術、プレス加工技術の習得を行ってきました。そのような苦労を経て、79年から本格的にこの技術に進出し、毎年高価な機械も1台ずつ増やして今や、当社の部品加工に占める比率は80%にもなっています。
当社の技術に対するスタンス
当社の技術に挑戦する姿勢には、独特の方法を実践しています。それは、プレス機械や金型加工機械を購入する時には、機械メーカーさんに「その技術の加工法の理論や金型設計等の技術指導」をお願いしています。最初の金型は機械メーカーさんに製作してもらい、実機にその金型を乗せてトライを行います。その後は、金型設計の指導を受けながら自社で金型が出来るように技術を蓄積します。当社のこれまでの、トランスファー金型、マルチフォーミング金型、ファインブランキング金型はこのような方法でノウハウを確立してきました。
最初は皆さんのお力を借りながら、当社技術者の育成や技術開発にチャレンジして、現在はファインブランキング技術をアメリカ市場で腕試しをしていますが、お蔭様で順調に推移しています。この発展を支えてくれたのは、当社の「金型」技術にその秘密があると確信しています。